クオンツと転職

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クオンツと転職

私を含めたクオンツで転職していない人はほぼいません。専門家の良いところはそれほどパイは大きくないけれど、うまく需要と供給がマッチしたり、有力な人脈さえ築ければ転職もわりと簡単なところです。

自分の転職経験、良かったこと、困ったこと

文章にすると、ひたすら長くなってしまうので、箇条書きにまとめました。

  1. 山一證券廃業で大手損保会社の運用部門
    良かった点:損保会社は経営が安定していて、年収が純粋に上がったこと1.5倍くらい、福利厚生よし
    悪かった点:超年功序列社会、残業あたりまえ(その時は)、専門家よりジェネラリスト、転職しにくい
  2. 大手損保会社のアセットマネジメント
    良かった点:大手町、若い人が多い、転職組も多い、自由
    悪かった点:年金運用は言い訳を気にする世界、運用の裁量なし、上層部は損保会社の人達、下は転職組、長くいても転職には不利そう
  3. 投信会社
    良かった点:ファンドマネージャ、地方金融機関への出張、プレゼン楽しい、転職しやすい職業
    悪かった点:保険会社のときより年収が少し下がり、おまけに契約社員になったこと
  4. 証券会社のインセンティブトレーダー
    良かった点:優秀なトレーダーとの人脈、自由なトレード、成績に応じたボーナス、夢あり
    悪かった点:損が続くと契約を切られる、結果全てで言い訳の余地なし、上手く言っても税金取られてそれほどお金は残らない、何年もできる可能性は低い
  5. 中小証券Aのインセンティブトレーダー
    良かった点:それなりに面白い人がいた、駅近オフィス
    悪かった点:給料が大手より低め、ずっといるベテランがいてドメスティック、営業第一主義の雰囲気満載
  6. 中小証券Bのアナリスト、部長、トレーダー
    良かった点:雰囲気良かった、駅近オフィス、大手にいた事をある程度評価、
    悪かった点:契約書が大手とくらべて雑、軽い年齢鎖別あり、システムが原始的

結局、どの会社も良い部分と悪い部分があり、トレードオフの関係があります。

その後、転職しやすいかが大事

世の中は常に変動しており、目先の年収が上がったとしても、そのあとキャリアを継続できなければ意味がありません。なのでその会社に入った場合に、どれだけ自分の将来に繋がるかは大事です。

私の場合は、サラリーマンとして一生を過ごすとしたら、年収が高く、安定もしている大手損保会社ということになるのですが、我慢するストレスコストがかなり高いうえに、専門家としての付加価値も落ちてしまい、自分のアイデンティティーが崩壊する環境でした。

逆に、収入が低くなり、契約社員にもなった投信会社に転職することで、その後のクオンツトレーダー人生の大きな始まりになりました。一見不利に思える選択が、かなり有利なことはあると思います。そういった選択を繰り返して成功体験を積み重ねることで、自分にも自信が生まれると思います。

人との繋がりと経験が人生を豊かにする

転職した、①から⑥の会社それぞれで、人との出会いがあり、私の人生に大きな影響を与えています。全く自分と違う人達と接することで、自分で気が付かなかった固定観念や偏見に気が付つことがあります。

山一證券・大手保険会社では人事異動を通じて、同じ会社とはいえ、部署が変化するたびに別会社に転職するほどの人材の違いを実感しましたし、年齢差別やパワハラに苦しむ人達を沢山見てきて、社会的な常識を感じましたし、それは子供が就職したりする際のアドバイスに活かせたのだと思います。

ファンドマネージャーやトレーダーの世界では、勝負にとことんこだわる人達や、本当に成功するトレーダーの圧倒的な熱量をみて、成功するための必要条件のようなものを学習できました。

自分が真剣に選択した結果の行動ならば、自分次第で失敗はありません。なので行動することが大事です。

クオンツの人が転職に備えるポイントは?

あくまで私の個人的な意見です。

  • 大手と中小では、コンピューター関連のインフラ環境、人材の厚みが圧倒的に違うと思って良いです。若いときは、大手のほうが良いです。
  • 自分が他の人達に負けそうな分野が自覚できたら、自分のキャリアを向上させるような分野での転職を想定しましょう。日本の会社では全く関係のない部署への人事異動で簡単にキャリアが断絶します。
  • サラリーマンの何倍も稼ぐトレーダー世界は派手そうに見えますが、何年もできる人はごく僅かです。クオンツトレーダーで長くやっている人は本当に僅か。アナリスト業務、専門クオンツアプリの開発など、長くできる仕事をこつこつやる方がおすすめです。
  • クオンツはいかに自習して知識を増やすかが大事です。誰もが知りたい専門知識は自分がファーストペンギンになるつもりで勉強しましょう。それができれば年齢が若くて、プレゼンできればいろいろなところに転職できます。
  • クオンツ業務はマニアックな世界なので、ヘッドハンターに探してもらっても、良い会社を見つけてくれる可能性は低いです。若いときは良いのですが、年齢に応じて、有力な人材と繋がることを意識しましょう。転職は紹介が最強です。