クオンツをやって良かったこと

Quants

会社の人事異動のきまぐれでクオンツやって、回り道もしたけど、結局ずっとやってきた。いろんな意味で良かったって話です。

良かったこと

  • コンピューターとプログラムに強くなった
  • 英語で調べることに抵抗がなくなった
  • 自習する習慣がついたので、知らないことは調べればいいと思えるようになった。
  • ファンドマネージャーになった
  • 証券会社の自己売買部門のトレーダーになった
  • インテリ系から野獣系まで、いろんな面白い人達に会えた

考えることに関しては、一番鍛えられたのは山一證券

そのころの上司が、激しく英語の論文やら文献やらを課題として与えてくれた。

Unix ワークステーション、様々な統計ソフトに、BARRAシステムを使った仕事をさせてくれた。

システムを中心に、教えてもらえる人がいなかったときは、いろんなマニュアルや文献で自習して、潜在能力をすごく発揮出来た気がする。機関投資家にプレゼンすることで、より鍛えられた。

周りに優秀な人達がいたことも、かなり良かった、認めてもらいたいと思って頑張れたし、それが出来たら必ず悪いことにはならないって確信、つまりチャンスだと思えた。

自分の能力が上がってく気がしたし、仕事もわりと楽しかった

アナリストからプレーヤーへ

投信会社でのファンドマネージャー

運良くうまくいった2年

証券系投信会社でクオンツ系モデルをベースにしたファンドを2年運用した。

毎日計算される基準価格、お客さんへのプレゼン、成績に関するリアルな反応、増えていく残高、実際に運用しないとわからない経験が沢山できて、充実していた。

運用が上手くいき、結果お客さんも増えていった。地方の金融機関へプレゼンするための出張も、程よい緊張感があり楽しかった。

今から考えると「運用が上手くいってなかったら、結構きつかったかも」って思う。

このまま続くのかな? そんなとき!

上手くはいっていたものの、ファンドっていうのは、初めに宣言した運用方針をずっと守らなくてはならいし、トレードも専門の部署に執行してもらったり、運用報告も毎月しなくてはならないし、窮屈な部分はあった

そのころは、クオンツモデルがわりと効いている相場で「あんなモデルやこんなモデルが自由に出来たら、きっともっと儲かる!」と思えたので、少し物足りない感じがあった。

そんなとき知り合いのヘッドハンターから連絡が「銀行系証券でクオンツのトレーダーを探している」

早速、手をあげて、2回くらい面談して転職が決まった

晴れて自己売買部門、初めて会うタイプの人達

入社した後、モデルはいきなり順調で、最初の数ヶ月でそこそこ儲かった。同じ部署のトレーダーとも交流できて、大和証券のプロップ出身のトレーダーや、他の証券会社や保険会社にいたトレーダーもいて、かなり人種のるつぼ的感じがあり、刺激的だった。

勝負に勝つプロ軍団

自己売買部門では言い訳はあまり通用しない、1年たって成績がどれだけかで報酬が決まるのだ。2年続けてマイナスになると普通は去っていくことになる。

なのでずっとやっている人達は、ずっと勝ってる人、メンタルがタフだったし、魅力的な人が多くて楽しかった。

そのころ、部は絶好調、12ヶ月連続で儲かっており、クビになる人もいなかったし平和だった。

ただうつ病になり入院したトレーダーが一人、成績が思うようにいかず転職したトレーダーが一人いた。

部長が変わると全てが変化

自分が入社したときの部長は、違う部署に人事異動、次に着任した部長でいろいろな事が変化した。

相場も変化し、いろんな人がクビになった

相場はトレーダーに合わせてくれない、このままずっとそうなると思っていた相場が急に変化したりする。

そうやって上手く行かなくて契約を切られたトレーダーは3人くらいはいただろうか。数日前に普通に会話していたのに、いきなり出社しなくなるトレーダー。

けどそれがインセンティブトレーダーであり、外資系の高給取りもそんな感じだと思う。普通なのだ。

クビになるかは紙一重だった

自分にとっても、モデルが効かなくなったとき、本当にどうしようかって感じだった。

儲からなくなったときのタイミングも大事だ、稼いでいた期間がそれなりにあれば、わりと時間的な余裕はある。

最初は上手くいかないときも、シミュレーションすればどうにかなるって思ってたのが、世の中はそんなにあまかない。そんな時に力を与えてくれたのが、他の優秀なトレーダーだ。

仲良く付き合ってくれる優秀なトレーダーはありがたかった、上手く行ってる仲良しがいると、それなりにヒントを貰えるし、なんとか自分の中に取り入れていけた。

彼らのおかげもあり、結局10年くらいたって、部署は儲かっていたものの、自己売買部門は大きなリスクを取るべきではないというボルカー・ルールで閉鎖になった。会社にアメリカの資本が入っていたことが大きい。

でも閉鎖になるまでクビにならなくて済んだので満足。長く続けることって重い。 ここでの学びはこうだ

  • シミュレーションは少しはかない
  • トレーダーはメンタルコントロールが大事
  • 定量化しにくい重要なデータがたくさんある
  • インセンティブトレーダーにクビは当たり前、でも普通に嫌
  • クビになっても、その後成功している人がそれなりにいる
  • クビがない社会が不健全で、実は日本の経済成長を阻害しているのかもしれない

などと思ったことです。

まとめ

クオンツをやっていることで、いろいろなことを経験できたり、いろんなジャンルの優秀な人達に会うことができた。良かったことは、それにつきます。

人はみな経験で成長します、クビは嫌だけど、それを恐れているといろんなチャンスを逃すかもしれません。安全なクオンツの人こそ、リスクを取って図太く楽観的に生きていければ最強だと思います。