僕がクオンツトレーダーを長く続けられた理由【トレーダーSさんとのコラボ】
Sさんは銀行系証券に転職したときに出会ったトレーダー、クオンツとは全く関係なかったのですが、なんとなく気が合い一緒にチーム運用をやったりして、それなりに上手く行き、楽しいチームに。
クオンツの僕はその頃NPMといったリスクモデルの最適化機能を使ってポジションを作っていたのですが、いろんな事に不自由さを感じていました。
クオンツ運用に行き詰まっていたととき、Sさんはペアトレーディングを教えてくれて、それまでのクオンツ手法に応用することができた。Sさんのおかげ長くクオンツトレーダーを続けられたという話です。
Sさんとの出会い
ファンドマネージャから銀行系証券の自己売買部門に転職した時に、プロパー社員としていたのがSトレーダー。その頃の部署は、外部の金融機関から採用された実績のあるインセンティブトレーダーと、会社のプロパー社員の二種類で構成されていた。
自分はインセンティブトレーダーで、入社して半年くらいはクオンツモデルのポジションでそれなりの利益をだしており、QuantsNaviというクオンツ情報をリクエストできるエクセルツールを公開していた。
Sさんはそのツールを愛用してて、アルファ情報という、ファクターによる銘柄ランキング情報を良くみていたので、自然と話しをするようになっていった。
その頃のSさんは、一見あやしそうな雰囲気を漂わせていて、なんか人と違うって感じ、目が大きくて、話し方がちょっと人と違っていて、切れるってイメージではなかった。
きらっと光るSさんのポジション
その頃SさんはCBをやっていたのだけど、とても儲けるのが難しい状態になっていて、CBを捨てて株のロング・ショートをやることになっていた。
Sさんも初めは仕手系ショート銘柄なんかで苦戦したりしてて、儲かっていなかった。ロング・ショートをNPMというシステムでファクター分析してあげたら、ショートの一部の銘柄を除くとわりと良くて、パファーマンスにきらっと光るものがあった。
その後だんだんショートの扱いが上手くなっていって、コンスタントに儲かるトレーダーに成長していって、最終的には、稼ぎ頭の一角をなすトレーダーになったのでした。
挫折、そして二人チーム運用、いい感じの成績
逆に、最初は上手く行っていた僕なんですが、逆張り有効相場から順?張り相場へ転換していくうちに、従来のファクターモデルによるポジションが上手く行かなくなっていました。「これじゃあ駄目かな?」って思っていて、始めることになったのがSさんとのファクター運用。
二人でアルファ情報という銘柄の評価ランキング情報を作っていくのですが、今までは論文などにかいてあるようなファクターしか使ってなかったところ、Sさんから、今までの基準とは違うアルファを提案されたりして、最初は抵抗あったけど、やってみるとうまく機能した。
Sさんは純粋に相場を起点にアイディアを出してくるので、グロースファクターに関するファクターが柔軟、ファクターは相場に聞け!って感じの決め方が新鮮だった。ファクター設計についての考えがかなり再整理されたのです。
オプティマイザーで計算したポートフォリオに最終調整を加えるのもSさんにやってもらった。全体のポートフォリオのファクターの性質をそんなに変えないように、銘柄を調整していくのですが、オプティマイザーより賢くポートフォリオを調整したりして、それも新鮮、というか羨ましかったものです。
4人チーム運用と崩壊
Sさんとのチーム運用が上手くいっていた一方で、他に仲良くしていた二人のトレーダーがいました。一緒にやれたらいいねという感じになり二人を加えた4人のチーム運用をやるという話が湧いてきて、部長に話したらOKしてくれて、やることに。
よく飲みに行ったりしてたし、それなりに役割分担ができていた気がしたので、上手くいくと思ったのだけど、一緒にやってる時にクオンツショックなどで一時的にやられたり、相場がどんどん変わっていってチーム運用ポジションは儲からなくなっていったのです。
ダメな時に主導するリーダーが決まってなかったり、4人で決めるポジションっていうのも無理があったりして、結局、解散。仲良し関係にもひびが入り、それなりに後味の悪さを残すことになりました。
「トレードで最終的に利益を出すのは勝負に似ている」、勝負事は一人でやるのがスッキリして後腐れもないなって思ったもんです。
オプティマイザーが機能しにくいロング・ショート
結局、元通り一人でやることになったのですが、その頃困っていたのは、オプティマイザーでロング・ショートを作ること。オプティマイザーに制約条件、銘柄のアルファ情報をインプットして出てくるロングとショートのポートフォリオなんですが
- オプティマイザーを使うとリバランスの時の回転率が高くなり、トレードコストが半端なくかかる
- 想定したファクター以外の理由で損している場合に、どう銘柄入れ替えすべきかわかりにくい
- リスクモデルの精度が悪くても思った結果にならない(リスクモデルに依存しすぎる)
- リスクモデルに依存しすぎると別の会社に移るときにそのリスクモデルを使えない可能性あり
などが切実な問題としてあり、今までのやりかただと、先がそれほどないような気がしていました。
ペアでロング・ショートを組み直す
そんなこともあって、うまくロング・ショートで儲けていたSさんにアドバイスをもらい、覚えたのがペアトレードです。
ペアトレードはトヨタをショートして、ホンダをロングするというように、ファンダメンタルでみて関連性は高いけど、その都度、どちらかが割高でどちらかが割安だと判断できる組み合わせでポジションを組むこと。
このペアをファクターのロング・ショートのように考えて、ペアの集合体とファクターの集合体を同時に考慮してポジションを決めていくシステムを作り、ロング・ショートを再構成したのでした。
ペアを変更したときのファクターの変化もシステムで管理できるようになったし、ペア用のグルーピングは四季報を熟読する必要があるので個別銘柄の知識も自然とつきました。
統計的に計算された銘柄間の相関性を、わかりやすいファンダメンタルベースで再構成した感じ、これが最終的にはハマりにハマり、オプティマイザーでやってた時とは比べ物にならないほど、効率的にトレードもできるようになり、全体ではクオンツのファクターモデルによるロング・ショートを作ることができたのです。
結局、このとき作ったシステムがあったから、そのあと環境にそれほど依存せずにロング・ショートが作れるようになったしトレーダーとして長くやってく為の大きな武器を手にいれることができたのでした。
Sさんありがとう!ちなみに、Sさんは今でも大手ヘッジファンドで活躍中です
まとめ
- Sさんとのコラボでクオンツに足りない必要な部分を補うことができた。
- Sさんもファクターを覚え、自分もペアトレを覚えてWinWinな関係
- 良い出会いはお互いにとって有意義、Give And Takeができる関係は素晴らしい
- チーム運用は難しい、役割が決まっていないと、逆に行ったときに脆くなる。